「ほんとのことを言ってくれ」
第三章

ほんとのことを言ってくれ31

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「……浸、る?」
「だって、まさかお前とこうなれるなんて思わなかったし。……お前じゃないけど、俺も同僚の奴が結婚するって聞いた時、俺もいつか数馬の披露宴でスピーチとかさ。するんだろうって思ってた……」
「弘君……」
 切なげに眉をひそめた野村が自嘲のように頬を歪める。そこまで想ってくれていたなんて、数馬の方こそ思いもよらない事だった。

 毎日のように顔をあわせていたはずなのに、まったく同じ葛藤を胸に抱えていた事に気がつきもしなかった。そして、恋人同志になったというのに、相変わらず彼の真意を察してやれない自分の鈍さに臍を噛む。

「ごめんね、なのに……。慣れてないのをからかってるって思って、僕……」
 数馬は野村を責めた自分を恥じ入るように顔を背けた。しかし、間髪入れずに野村に頬に口づけられる。
「……弘君」
「そんな顔するなって。お前が抱けて嬉しいって言ってるだけなんだから」
 だからじっくり味あわせろと、少年めいた悪戯な目で数馬を見下ろす。数馬は何のことだと眉を上げたが、あっという間に体位を変えられ、仰向けられた。

「わっ!えっ?……あっ、わっ」
 同時に体の芯部を野村の屹立でぐるりと抉られ、ビクビク体を跳ねあがらせた。その上膝を開かされ、濡れそぼる性器を野村に晒す羽目になる。
「あっ、や、……ちょっ、これ」    
 咄嗟に掌で隠そうとするも、野村にすぐさま制されて、標本の昆虫よろしくシーツに両手をぬいつけられる。
「こら、暴れるな」
「やだ、だって、これ。あっ……!」
「隠すなよ、馬鹿。全部見ながらしたいのに」
「ヤダ、変態!やめてよ、あっ、……やっ」
 身をよじらせてもがいても、押さえこまれた左右の手首はビクともしない。直後に、うるさい口を塞ぐように口づけられて、部屋が一瞬の静寂に包まれる。         

「……っふ、んん。……あっ」
 先刻までとはうってかわって、肉厚の舌が数馬の口腔を隈なく貪る。そうして忙しなく息を継ぎ、くり返される凄烈なキス。野村はキスの合間に胸を擦って乳首をいじり、凝った先をきつく吸いあげ、歯をたてた。

「ああ、……っん!んん、ああ……っ」  
 性急なキスと深い愛撫。
 狂おしいほど翻弄されて、あられもない声を張りあげていると、すかさず奥を突きあげられる。
「あっ!あっ、……はっ、ああっ!」
 やっ、そこ止めてとのたうちながら、頭の上でシーツを堅く握りしめる。けれども野村に腰を掴まれ、力任せに引き戻された。
「なんだよ、強くしろって言ったくせに」
 野村はあざとい笑みを浮かべると、数馬の脚を胸につくほど折り曲げる。

「えっ?あっ!やっ、なに……っ」
 今度は性器だけでなく野村と繋がる後孔までも剥出しにされ、数馬は慌てふためいた。思わず半身を起しかけたが、野村に肩で押し戻される。そのうえ野村が更に膝を進め、続けて奥を猛打した。    
「ああ、あっ!あっ、……んん……っ!」
「キツイか?数馬」    
「ううん、あっ、ちがっ、……でも、ああっ」
 言葉もまともに紡げないほど激しく腰を送りこまれ、数馬は語尾を跳ね上げた。
熟したような内襞をまくりあげられ、奥を突かれ、ゆったり円を描いて広げられ、ベッドの上で華奢な肢体をのたうたせていた。そうしてまるで狙い定めたかのように前立腺を穿たれこすられ、くすぐられ、喜悦の声が迸り出る。

 初めてなのに、こんなに感じて呆れられやしないかと、思わず数馬は薄目を開けて頭上の野村を窺い見た。しかし、野村は涙で煙った視界の中で、いつものように慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。

「どうした、……痛い?もう止めとくか?」
 最後に「ん?」と、小さな子供に訊ねるように片眉を上げて数馬を見つめた。呆れるどころか嬉しげに眦を蕩けさせ、いつにもまして甘い声音で囁きかけられ、数馬は安堵の息を吐く。 
「……数馬?」
「ううん。……いいから。大丈夫だから。弘君、……もっと」
 数馬は夢見心地で野村の肩に腕を巻きつけ、その唇に唇を重ねあわせた。
「数馬……」
「……痛いんじゃないから大丈夫。……あんまり良すぎて、……どうにかなっちゃいそうなだけだから」

 互いの唇を啄ばむだけのキスを交わし、濃艶な睦言を交わしあう。やがて、数馬が野村を引き寄せながらベッドにその身を横たえさせると、野村が口接を深くする。  

「んっ……、ん、あっ、……んん」
 あわせた唇と絡めた舌が時折たてる濡れた音。
 切なげな息。爆ぜる汗。
「あっ、あっ、弘……、ああっ」
 野村が腰を穿つたび、媚びて許しを乞うかのような甘えた声と息がもれる。
 悪辣な男にいちばん感じるそこばかり嬲られ擦られ、凄まじい抽挿で揺さぶられながら胸の尖りに吸いつかれ、かぶりを振ってわめきたてた。  

 ベッドのバネが軋む音。 
 うなじにかかる熱い息にも煽られ続けて、歓喜の涙を溢れさせた。汗と唾液でぬめった胸を擦りあわせ、互いの匂いと体液を執拗に肌に塗りこめる。
「あああ、あっ、もう……っ!」
 絶頂にまで一気に野村に突きあげられて、弓なりに背をしならせる。 
 数馬がそのままぎゅっと目を閉じ、唇だけを喘がせていると、すかざず奥へと質量のある突き上げをくれられ、頭の中で火花が散った。

「あっ、弘……っ、あっ、あ……っ!」
 数馬は声にならない声を張りあげ、白濁の飛沫を噴き上げさせた。同時に野村も腰を穿って天を仰ぐと、数馬の中にその熱情を余す事なく注ぎ入れる。
「あっ、あ……。ふ、ああ……」
 ねっとりとした体液で体の奥をしたたかに濡らされ、数馬は途切れ途切れに息をもらした。
 絶頂の余韻に浸るように、野村が腰を前後させると、体の中でねちねちとそれが音をたてる。  
「数馬、……」
 数馬と、吐息を艶冶に擦れさせ、数馬の汗濡れた肩を慈しむように撫でさする。数馬もまた浅瀬でゆったりたゆたうように白い肢体を揺らめかせ、閉じた目蓋を戦慄かせていた。     

「……弘く、ん」       
 やがて恐々目を開けながら心許なく名前を呼べば、応えるように額にキスを落とされる。そのまま額に目蓋に頬に鼻に、啄ばむような短いキスをほどこされ、最後に唇に重ねられる。                
「大好き、弘君」
「俺もだ、数馬」            
 飽く事なく交わされるキスの合間に、うわごとのように囁きかけ合う。数馬は身を乗り出させて野村の肩に腕を絡め、引き寄せながら口づけをかわす至福の海の深遠に、二人ともに沈んでいった。




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