「ホワイトナイト」
第二章

ホワイトナイト13

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「お気使い、ありがとうございます。でも、もうちょっと仕事してから、すぐ失礼しますんで」
 と、シャッターを切り、にこやかに申し出を辞退した。と同時に、ファインダーを向けられた房子が顔の前で手を振りながら畏れ慄き、障子を閉じて逃げていった。                 

「ここの仲居さんは出過ぎたところがなくて、感じいいよね。彦坂君の教育の賜かな」  
 「……そんな」  
「僕も職業柄、いろんな所に行ってるけど。がさつで出しゃばりな奴が経営するホテルは、サービスも過剰で独りよがりだったりするからさ。接客業は特に出るんだよ。経営者の性格が」  
 レンズを交換しながら語る望月の口ぶりには必要以上の媚はなく、猛は純粋な賛美だと思った。       
「ありがとうございます。心します」    
 褒め言葉を素直に受け取る猛に目を細め、望月が機材一式を肩にかける。        

「じゃあ、利き酒会の会場に案内してもらっていいかな」                
「わかりました。別棟の二階なんで少し歩きますけど」                 
 望月を案内しながら、猛は庭に面した廊下の窓から何気に外に目をやった。   
 その時、彦坂旅館から街道を挟んで斜向かいにあるカフェ&ギャラリー『綾』に向かう陽介の姿が視界を横切る。猛は思わず足を止め、陽介の後を目で追った。     

 古民家風の店から中年の女性客と出てきた綾が、入れ違いに店に入る陽介に、親しげに声をかけている。        
 頭頂部で無造作にまとめた黒髪。
 化粧気はないのに、素晴らしく目が大きくて鼻筋の通った華やかな美貌が遠目にもわかる。細身のジーンズに合わせたシンプルなセーターと同系色のストールを首に巻いただけのラフなスタイルも、むしろ綾の抜群のスタイルを引き立てている。

 カフェ&ギャラリー『綾』は、古民家をリノベーションした店舗の一階が地元のアーティストの作品を中心に扱うギャラリー。
 二階は綾が調理と接客を務めるカフェバーになっている。その店のオーナーでもある北添綾と陽介が懇意にしているらしいことは、この数か月で薄々感じてはいた。
 だが、実際こうして目にしてしまうと、いてもたってもいられなくなる。 




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