「ほんとのことを言ってくれ」
第三章

ほんとのことを言ってくれ19

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「……で、でも、弘君は別にうちの店の人間じゃないし、そこまで当てにできないよ」
 叱りつけるように語気を強める池内は、まるで野村を避ける本当の理由を見透かしてでもいるかのようだ。数馬は後ろめたさを覚えながら、空笑いして顔を背けた。

 そもそも野村はあの日以来店に顔を見せてはいないし、電話もメールも一切なかった。こちらに一方的に距離を置かれ、野村が怒っているのは明らかだった。

「弘君もきっと忙しいだろうし、あんまり甘えてばっかりいても……」
「忙しいかどうかなんて、本人に聞かなきゃわかんないでしょう」    
 言い訳ばかりを並べたてる数馬に痺れを切らしたように、池内は自ら携帯を出して操作を始める。
どうして番号を知っているのか慌てて問うと、初対面の時にもらった名刺があると言う。池内は数馬の制止をり払い、数コールで出た野村らしき相手に応えて言った。

「ああ、お忙しいところ、すみません。ええ、そうです。『向坂』のバイトの池内です。今日はちょっと、数馬君の事で相談したい事があって」
 池内は携帯を奪おうとする数馬を無言で肘で押し戻し、数馬が多忙の野村を慮って何も相談できずにいる旨を告げる。
「ちょっと……、池内君!本当に待って」  

「ええ、実は数馬君が仕入れを検討しているワインの醸造元が修道院で、一般の流通ルートでは入手できないそうなんです。そういう所から仕入れるにはどうしたらいいんだろうって僕とも話をしてたんですけど、僕にはそういう営業とかって何もアドバイスできないですし。……そうですよね?ええ、はい。じゃあ、本人に代わりますんで」    
 呆然とする数馬を尻目に一気にまくしたてた池内が、傲然と彼の携帯を差し出してくる。数馬は咄嗟に胸の前で手を振りながら退くも、頭の上からじろりと睨みつけられて、受け取らざるを得なくなる。
「……あの、弘君。ごめんね。僕だけど」




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