「ホワイトナイト」
最終章

ホワイトナイト111

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「何なんですか、さっきから! 痛いじゃないですか。離して下さい!」        
 別れるも何も恋人同志になった自覚があったかどうかも怪しいものだ。猛は肘を振り回し、捕まれた手を払いのけた。けれども今度は陽介の腕にたぐり寄せられ、その胸の中に閉じこめられる。                       

「いい加減に……っ」
 と、怒鳴りつけ、反射的に顔を上げたが、陽介の静謐な目が猛をギクリと射竦める。胸の鼓動が大きく波打ち、思わず四肢を強ばらせると、陽介がふいに微笑んだ。         

「お前、俺とは『死なば諸とも』じゃなかったのかよ。そう言ったんだろ? 山岸さんに」
「……えっ?」
 めまぐるしく変化する陽介の言葉と表情に、気持ちも思考も追いつかなかった。 

 けれど、突き放しても突き放しても怯まなかった少年の目が一途な想いを猛に届ける。その陽介を凝然として見上げることしかできずにいると、額にキスが落ちてきた。       
「俺を見捨てるぐらいなら旅館潰すって言ったんだろう? 甘い汁吸い合うだけがパートナーシップじゃねえんだって、啖呵切ったんじゃなかったのか」
「どうして、陽介さんがそんなこと……」
「TOB仕掛けたあとで一時帰国した時に、山岸さんにも挨拶したら愚痴られたんだよ。一度言い出したら、テコでも動かねえから往生するって」

 猛はあっけにとられていたが、陽介はさらに目を細め、猛の肩を抱き込んだ。髪に熱い息を吹き入れて、愛おしそうに撫でる掌。甘えるようにうなじに頬をすり寄せられると、息が止まりそうになる。

「あの海千山千の番頭と女中頭を言い負かせてねじ伏せるぐらいの根性持ってて、なんで俺だとそうなるんだよ」
 ちょっとは粘れと、拗ねた陽介に背中を軽く叩かれる。その後すぐに狂おしく甘く抱きすくめられ、猛は思わず目を閉じた。 
 陽介が触れた背中が熱い。 
 身体の芯がゾクリと戦慄き、吐息をもらして身動ぐと、逃がすまいとするように腕に力を込めてくる。

「お前はすぐに関係ないとか無理とか言うけど、そんなに俺なんかどうでもいいか? 別れたってどうってことない奴なのか?」
「そんなこと、僕……」
「だったら、そういう言葉を軽々しく言うもんじゃない。お前に別れるなんて言われたら、さすがにヘコむぞ? 俺だって」
 子供の『おいた』を叱るように陽介に眉根を寄せられて、猛はしゅんと肩を落とした。
 確かにその気もないのに脅しのように口にして、もしも本気にされたりしたら、自分がいちばん後悔するのだ。そんなに簡単に手放せるはずがない人に猛は懇親の力で抱きついた。

「大体、恋人の家のパーティに浮気相手を連れてく奴がいるのかよ。考えてみろ? ありえねえだろ、そんなこと」
「ごめんね。ちょっと、ヤキモチ妬いただけだから……」




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