「ホワイトナイト」
最終章

ホワイトナイト110

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その夜、猛が庭の敷石道を一人で渡り、離れの自宅に戻る頃には既に日付も変わっていた。
 吐く息が漆黒の闇で白く浮き、あっという間に手足がかじかむ。凍み入るような静寂の中、草履の足音と着物の裾をさばく音が交互に鋭く響いていた。 

 猛は足を速めたが、玄関の軒下灯が照らし出す男の影に気づいた刹那、目を見開いて立ち止まる。
 と同時に、軒下から進み出てきた陽介が苦虫を噛みつぶしたような顔で言い捨てた。
「遅かったな」
 陽介は紫煙をくゆらせていた煙草を落として靴底で踏み消す。軒内の延段には煙草の吸い殻が散乱していた。

「お忙しいのにどうしたんです? そんな所で待っていないで、メールして下されば良かったのに」
 けれど、猛にはそんな煙草の吸い殻さえも演出のように白けて見える。
 目も合わせずに言い放ち、陽介の前を通り過ぎた。
「イリーナは、よく懐いてくれてる親戚の子みたいなもんなんだ。さっきだって、玄関の前でたまたま会っただけなんだし、それ以上の事はなにもない」
「何にもないって、前にキスしてたじゃないですか。今日だって、二人で抱き合って入ってきて……」
 鼻で笑った猛の口から白い息がたち昇る。                      

「陽介さんみたいな人には大勢恋人がいて当然なのかもしれませんけど、僕には無理です。そんなの堪えられませんから」
 射るような目で睨み据えると、玄関に鍵を差し込んだ。途端にその手を鷲掴みにされ、力任せに引き戻される。 
「無理って何だ。俺は別れねえぞ、絶対に」    
 間近に迫った双眸が憤怒の炎を宿していた。猛は一瞬腰が引けたものの、ぐっと奥歯を噛みしめる。




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