「ホワイトナイト」
最終章

ホワイトナイト109

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「猛君、ありがとう。さっき山岸さんからバーのチケット、頂いたんだ。だから、これから綾さんと二人で行こうと思ってさ」
「そうなんですね。良かったです。お二人にも新酒を試して頂けて」
「今日は望月君も猛君ところの貴賓室に泊まっていくって聞いたから。久しぶりに記憶飛ぶまで呑むわよ。ね?」
 綾が望月の腕に腕を絡め、上目使いに同意を求める。綾の宣戦布告に仰け反って、望月も慄いてみせたものの、すぐに猛に視線を戻して微笑んだ。 

「それから陽介のことだけど、一緒に来ていたあの女の子。俺が来た時にはもう門の所で一人でうろうろしてたから。あれ、きっと陽介を待ち伏せしてたんじゃないのかな」
「……えっ?」

「だから、陽介があの子を連れてきたんじゃないと思うし。許してやってよ。あいつ、猛君に無視されると、ほんとマジでへこむから」
「望月さん……」
 宥めるように優しく双眸を細められ、猛はぐっと喉を詰めた。
 それが陽介の友人から、陽介の恋人に対する要望なのか。それとも長いつきあいの友人から陽介の弟分への言葉なのかはわからなかったが、猛は黙って目を伏せる。

「じゃ、また明日。猛君も今日は本当にお疲れ様」
 と、猛の肩をそっと叩き、望月は目顔で綾を促した。 
「望月君って、ほんと陽介さん大好きよねえ」
「だって、なんか不肖の息子みたいじゃん。ああ見えて危なっかしいとこもあるからさ」
「じゃあ、俺がいないとダメんなっちゃうみたいな子がタイプなんだ。なんか意外。望月君って、彼女にもわりとクールな方だと思ってたのに」
「そういう綾さんだって甘やかしてるじゃん」           
「結局、私たちが親馬鹿すぎてダメ息子にしちゃったのかしら。陽介さんを」   
 気のおけない軽口を交わす美男美女を蝶の間の前で見送りながら、猛はひっそりため息を吐く。
 もしも二人が今の自分の立場だったら、陽介に何を思ったのだろう。二人のように笑って許してやれたのか。それとも陽介の不実と迂闊さを、なじって責めていたのだろうか。

 広間や廊下のそこかしこでは、まだ名残惜しげに談笑にふける客の姿が点在していた。
 しかし、採光の絞られた天井灯や間接照明。クロスの掛かったテーブルだけが残された座敷のどこにももう、陽介の姿は見られなかった。




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