「ホワイトナイト」
最終章

ホワイトナイト105

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 ふいに言葉を詰まらせた綾の横顔に深い懊悩が浮かんでいた。
 猛も思わず語尾を擦れさせたが、綾はやがて何かをふっきるように決然として頭をあげる。
「あの時は猛君にも八つ当りして、ごめんなさい。あんな嫌味な言い方されて気分悪かったでしょう? 本当に……」
「いいえ。全然そんなこと」
「だけど、結局その勢いで陽介さんに告白しちゃって玉砕したの」
 綾は薄い微笑を口元に張りつけながら、おどけるように両手を開いた。
 綾が努めて明るく振舞おうとすればするほど猛は胸が痛んだが、あえて口を噤んで聞いていた。今ここで自分が何を言っても彼女を傷つけそうで恐かった。

「陽介さんはずっと無神経なことして悪かったって謝ってくれたんだけど。でも私、猛君のことを嬉しそうに話してくれる陽介さんが大好きだったの。本当に子供みたいにキラキラした目がすごく、すごく綺麗だったの……」

 長い睫毛を震わせながら伏せる綾も、少女のように幼気だった。しかし罪悪感より、むしろ綾への繰り言の方が胸に突き上げ、思わず前に進み出る。
「でも、僕だって陽介さんが綾さんの所に行くのは嫌でした」
 嬉々として綾のもとへ通う陽介をどんなに恨みがましく見送ったことだろう。そのたび感じた胸の疼きが蘇り、いじけるように顔を背ける。けれども綾は目を見開くと、眉をそびやかせながら豪語した。

「猛君だって、ちょっとぐらい妬きなさいよ。私だって妬いてるんだもの」
「ちょっとじゃないです」
「あら、こんな意地悪ぐらい覚悟の上じゃなかったの? あんないい男ひとり占めにして」 
 猛は脇腹に綾の肘鉄を食らわされ、一瞬仰け反り声をあげた。
 苦笑しながら振り向けば、綾もまた苦く笑って応えてくれる。こうしていつも綾のこの男気に自分は許され、救われている。綾と二人で泣き笑いのように歪んだ顔を見合わせていると、着物の帯に挟んだ携帯が鳴り、猛ははっと我に返った。




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