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【  2017年04月  】 

咲かない桜の桜守 9

第二章

2017.04.11 (Tue)

 「樹の表皮のすぐ下に、根が吸った養分を運ぶ管が通ってる。だからこうすると、その管が養分を吸いあげる音が聞けるだろう?」言いながら幹に聴診器を押しつけて、じっと聞き耳たてている。健康な樹木であれば、血流のように管を流れる水音がするという。「今は樹木医も超音波で測定したり、スキャンで撮影したりするけどな。俺は自分の耳で直接聞いて判断する。吸いあげる音の勢いとか、どこで雑音が交じるかとか」「でもそれ、僕...全文を読む

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咲かない桜の桜守 10

第二章

2017.04.12 (Wed)

 羽太は声をかけようと、必死に言葉を探したが、気持ちばかりが先に立ち、頭の中は空っぽだ。心臓が痛くなるほど拍動し、息が苦しくなってくる。いっそ作業の邪魔をしないよう庭を去り、朝食の用意をした方が松田のために、なるのかも。昨夜感じた弾んだ気分の萎えてしまい、羽太はそっと庭から縁に戻りかけた。とはいえ、さっきからやけにあの枝垂れ桜を気にする松田が不審にも奇妙にも思えてくる。「その桜は庭の中にありますし。...全文を読む

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咲かない桜の桜守 11

第二章

2017.04.13 (Thu)

 「だったら、今日は風もないし天気もいい。今日のうちに済ませよう」     松田は晴れやかに微笑んだ。そして、桜を離れて、すれ違いざま羽太の肩をポンとはたいて促した。同時に夢から覚めたように、羽太は両目を瞬かせ、慌てて左右を見回した。「……えっ、と。済ませておこうって」「根付ぎは一人じゃできないんだ。予定がないなら手伝ってくれ。仕事か? 今日も」「いえ、今日は祝日ですから休みです。予定もないんで、それ...全文を読む

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咲かない桜の桜守 12

第二章

2017.04.14 (Fri)

 二人で朝食を済ませたのあと、松田は作業用のつなぎに着替え、軍手をはめた。平家桜の子孫にあたる庭の枝垂れ桜の若木の根元を、小さなスコップで掘り始める。羽太は松田の傍らに屈みこみ、松田の指示をあおぐべく目下のところ待機中だ。「何本ぐらい接ぐんですか?」「多くて七、八本だな。人間でいうと臓器移植なもんだから。一度にたくさん接ぎ過ぎても、逆に桜を消耗させる」こと桜の話となると、松田の口も滑らかになるらしい...全文を読む

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警告です

未分類

2017.04.14 (Fri)

 某さんへあなたがつい最近、私にした事へのメッセージです。1回目、あまりにもあなたの思い通りすんなり事が運んだので、2回目も同じ手口を使いたくなったんだなと思いました。あなたは、その誘惑に勝てなかった。あなた、それ。放火魔と同じ心理ですよ。今回も他人を攻撃し、陥れたら安心する。それで気が晴れるというのなら、あなたはそういう小説を書く人になるんでしょう。そして、それは必ずあなたの小説を読む人に伝わりま...全文を読む

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咲かない桜の桜守 13

第二章

2017.04.15 (Sat)

 庭の実生の桜から切り出した根を持って、松田の車で今度は乾山に移動した。平家桜のある公園の駐車場に車を停めるやいなや、羽太も松田の車のトランクから、シャベルやスコップや剪定鋏、藁縄などの道具をせっせと運び出した。松田の動作が心なしか機敏さを増している。つまり根付ぎも時間との闘いなのだろう。羽太は無駄口も挟まず松田に続き、駐車場から公園に続く階段を駆け降りた。冬晴れの朝の陽光が、広大な公園の遊歩道にも...全文を読む

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咲かない桜の桜守 14

第二章

2017.04.16 (Sun)

 「俺の親父も樹木医で、何回も根付ぎをやっている。だけど、根付ぎの時の相方は、プロの俺じゃなくて、自分の女房にさせるんだ。俺の母親も普通の主婦だし、専門知識だって全然ない。なのに、息子の俺より息が合うとかよく言われる」松田も立ち上がり、伸びをしたり、身体を左右に折り曲げたり、四肢の凝りを解している。ひと仕事終えた安堵からなのか、松田にしては饒舌だ。「夫婦なんか他人なのに変だよな。根付ぎやってる親父と...全文を読む

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咲かない桜の桜守 15

第二章

2017.04.17 (Mon)

 その後も松田は平家桜にハシゴを掛け、枯れ枝を鉈で落としていた。休日なのに様子を見に来た小泉は、太い枝にも躊躇なく鉈をふるう松田を見上げて眉をひそめ、羽太に囁きかけてきた。 「本当に大丈夫かよ。あんなにバッサバッサ切っちゃって」「専門家が切るべきだって判断したなら、切るべきなんじゃないですか?」「だけど、せっかく樹齢八百年の古木なのに。貧相になっちゃうだろう。見栄えが悪くなっちゃったら、写真家も撮り...全文を読む

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咲かない桜の桜守 16

第二章

2017.04.18 (Tue)

 「今の時点でやれる事は全部した。このあと何をするかは、根付ぎの結果足次第だな」脚立を閉じて地面に置き、松田は淡々と説明した。また、桜の根元に散乱したスコップや薬剤も道具箱に整然と収納し、腕時計で時間を確認する。やるべき事は全部した。だから帰宅する。そんな当たり前の事が、羽太には凍りつくほどショックだった。引き止めたいと思っても、何の理由も浮かばない。もうここで、する事はなくなった。そう断言した松田...全文を読む

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咲かない桜の桜守 17

第三章

2017.04.19 (Wed)

 松田の車で家の前まで送られて、羽太は助手席を下りた。ドアを開閉めながら、最後にもう一度礼を言うと、松田は右手をハンドルに乗せたまま、左手を軽く掲げて微笑した。「気をつけて、帰って下さいね」「また連絡する」何気なく言い残し、松田は助手席のドアが閉まると同時にアクセルを踏み、車を市街に向けて走らせた。羽太は暗闇に、ぽかりと浮かぶテールランプを門前で見送った。写真や動画はできるだけ送れと言われたが、また...全文を読む

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プロフィール

坂東蚕

Author:坂東蚕
BL小説書き。
小説ディアプラス第27回チャレンジスクール編集部期待作・第1回BL小説大賞編集部期待作受賞。
お仕事ものや、和風、明治大正昭和レトロなBL好き。

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