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【  2017年01月  】 

死か降伏か 19

第二章 綾なす姦計

2017.01.11 (Wed)

 壬生浪士組幹部のひとり、近藤勇は京都守護職松平容保(まつだいらかたもり)がいる金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)に早朝から参じていた。 「芹沢鴨がはたらいた蔦屋への蛮行、狼藉の数々、許しがたい」 と、外国奉行の文書を朗じる藩士の前で、近藤はひたすら座敷の下座で平伏し、言い訳もせずに陳謝の言葉を言い述べた。当の芹沢は昨晩から遁走し、行方知れずのままだった。 「蔦屋は英仏蘭露、支那語もできる。経理に明...全文を読む

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死か降伏か 20

第二章 綾なす姦計

2017.01.12 (Thu)

 壬生浪士組が近藤派と芹沢派に分裂をきたし、粛清(しゅくせい)をもって組する以外に道はないと、互いに機を狙っていたことは否めない。しかし、それは隊の内情であり、蔦屋に関わりのないことだ。思案しながら回廊に佇んでいると、対岸から廊下を渡り、近づいてきた沖田がそっと掌を添えて囁いた。 「土方さん。蔦屋が目通りを願い出ています」 驚いた土方と目と目をかわして頷き合い、土方の後に沖田も続く。中庭に巡らされた...全文を読む

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死か降伏か 21

第二章 綾なす姦計

2017.01.13 (Fri)

 「千尋さん」 沖田は壬生寺の裏門を出て、すぐに千尋に追いついた。彼は手代の一人も伴わず、町駕籠(まちかご)も使わずに歩いていた。「……何でしょう?」「これ、お返ししようと思いまして」 炎天下で駆けてきた沖田は頬も耳も紅潮させ、あどけない少年のようだった。返すと言った声音も無邪気で、屈託がない。没収して自分の物にするだとか、売り飛ばして換金しようなどという発想すら出てこない類の人間だ。千尋は路上で足を...全文を読む

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死か降伏か 22

第二章 綾なす姦計

2017.01.14 (Sat)

 「難儀(なんぎ)どしたなあ、ほんまに」 佑輔が無残に焼け落ちた一軒家の落ちた瓦や重なる建具(たてぐ)を拾い上げ、手押し車に投げていると、見知らぬ新造(しんぞう)から不意に声をかけられた。 堤が塾長を務める洋学塾の学舎だった借家が付け火に合い、全焼してしまったからだった。牢屋敷に収容された千尋と自分を助けるため、堤が京都守護職に目通りを願い出て、夜通し亰の町を奔走していた留守をつかれた凶事だった。 ...全文を読む

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死か降伏か 23

第二章 綾なす姦計

2017.01.15 (Sun)

 「久藤さんは、町人の千尋さんが京都守護職ですら手出しできない人だなんて、考えもしなかったはずですよ。しかも、今や政権の要といってもいい幕府の外国奉行が後盾です。慶喜公や堤さんは当然でしょうけれど、私ですら知らされてたのに、自分だけは蚊帳の外に置かれてたなんて傷つきますよ。そうでしょう?」 花村は優しげな面立ちに柔和な笑みをたたえて言った。そして、持参してきたまな板を平らな庭石の上に置き、スイカを包...全文を読む

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死か降伏か 24

第二章 綾なす姦計

2017.01.16 (Mon)

 佑輔は裏長屋の井戸端に盥(たらい)を置き、自分の下帯を慣れた手つきで洗い出した。塾長の堤が洋学塾兼住居にしていた一軒家が火付けに合い、住む家を失った門下生一同は次の借家が見つかるまで、借り住処(すまい)として、蔦屋からも程近い長屋に移り住んでいた。灰汁(あく)を使って下帯を洗う佑輔の前に大小(だいしょう)を帯に差した男が無言で現れて、洗濯をする佑輔の顔に影をさした。 「あなたは、そんなことまで御自...全文を読む

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死か降伏か 25

第二章 綾なす姦計

2017.01.17 (Tue)

 佑輔は不承不承(ふしょうぶしょう)に問いかける。本当なら沖田と話などしたくもない。あの千尋が『特別』だという沖田など。洗濯を終えた下帯を入れた盥を抱え、むっとしたまま井戸を離れようとした。沖田は慌てて後を追い、横に並び立とうとしたものの、はっと気がついて退いた。身分が判明した以上、並んでは歩けない。だが、あまりにも彼が浪人然としてぬかるんだ路地にも、ひしめく裏長屋にも溶け込んでいるせいか、つい年少...全文を読む

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死か降伏か 26

第二章 綾なす姦計

2017.01.18 (Wed)

 千尋が八坂神社の門前で、昼食に屋台のうどんを啜っていると、ポンと後ろから肩を叩かれた。千尋が瞬時に腰の脇差に手を伸ばし、一瞬箸を止めたのち、肩越しに目だけを向けたその先に、見知らぬ男が立っていた。「えらい評判でんなあ、あんさん」と、砕けた口調で話し出し、満面に喜色をたたえている。高価な薩摩上布の帷子(さつまじょうふのかたびら)に細い優美な本多髷(ほんだまげ)。どこぞの大店の若旦那といった風貌だ。「...全文を読む

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死か降伏か 27

第二章 綾なす姦計

2017.01.19 (Thu)

 「これが、奴の描いた絵図だったわけか」 騒動前とはうってかわって蔦屋も賑わいをみせている。千尋も呉服屋の主人らしく、鼠色(ねずいろ)の着物に角帯を締め、京女たちを遇していた。 そんな蔦屋を塀の陰から睨み据え、土方が路地に唾を吐いた。傍らの沖田が相変わらずだんまりを決め込んでいることも、土方の苛立ちに拍車をかける。つい先日まで、諸外国から仕入れた安価な生地で割安に、商売をする蔦屋を『国賊』と呼んで忌...全文を読む

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死か降伏か 28

第二章 綾なす姦計

2017.01.20 (Fri)

 と、その時、沖田の背後で足を止めた一人の舞妓が俯く沖田を覗き込み、はにかみながら会釈した。おそらくどこかの宴席で、沖田に侍(はべ)った女だろう。美形の沖田は玄人(くろうと)女達からも商売勘定を抜きにした好意を向けられることも多かった。しかし、沖田は気がつきもせず、顔をあげることもない。この男は仲間や自らに向けられた殺気には神掛かった能力を発揮する。その反面、色恋や女の秋波に関しては呆れるほどに鈍感...全文を読む

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プロフィール

坂東蚕

Author:坂東蚕
BL小説書き。
小説ディアプラス第27回チャレンジスクール編集部期待作・第1回BL小説大賞編集部期待作受賞。
お仕事ものや、和風、明治大正昭和レトロなBL好き。

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