向かい風を行く 27

 23, 2017 01:11
しかも噂されるのは美貴の周囲でだけ。
甲斐と同期の藤木に嘲笑混じりに訊ねられ、絶句したのが最初だった。

「ミキさん、知ってました? 甲斐ってマジでホモらしいスよ。
これまであいつに告った女。全部撃沈だったみたいだし。
マジあんんじゃねえのって言う奴とか、いたんスけど」
「……えっ?」
祭りの打ち合せを兼ねた青年団の飲み会で、藤木は勝ち誇ったようにうそぶいた。
瞠目したきり、声も出せずにいる美貴に藤木が更に耳打ちした。
「ミキさん、大丈夫でした? 正直口説かれたりとかあったでしょ?」
含み笑った藤木の目が異様な光を放っていた。
これで、公然と甲斐をいたぶる理由ができたとでもいうように。

「あー、なんか俺もその話聞いた。ホモが二人で甲斐を取り合って。
なんか傷害っぽくなったんだろ?」
美貴の右隣で呑んでいた同期の団員もビールジョッキをあおりつつ、
揶揄するように言い放つ。
「はあ……っ?」
ほぼ満席の居酒屋は学生達のグループやサラリーマンが談笑する声、
注文の品を運ぶ店員の声、威勢のいい板前の声が交差して、
同席する左右の藤木や団員の声さえも、聞き返さないとわからない。
心臓が一気に不穏に打ち乱れ、思考がまともに働かない。

「な、えっ? ……甲斐は? 甲斐は大丈夫だったのか?」
だとしたら噂の発端は、その甲斐を交えた傷害事件だったのか。
美貴は藤木の反対側に向き直り、飛びかかるように問いつめた。
「知るかよ、そんなの。そこまで全部聞かねえし」
美貴と同期の団員は急に怯んで語尾を濁し、鼻白むように美貴を見た。
結局、誰に聞いても詳細まではわからない。
埒が明かず、美貴は舌打ちしながら座を立った。
 
人のいない廊下まで来て甲斐の携帯を鳴らしたが、
何度かけても留守電メッセージに切り替わる。
夜遅くても構わない。すぐにでも電話するよう伝言を残し、
そのまま榊原に電話した。
だが、榊原も、
『なに? それ。誰がそんな馬鹿なこと』
と、驚きの声を上げた。


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向かい風を行く 28

 24, 2017 06:20
「榊原さんは何も聞いていないんですか?」
『知らないよ! 誰もそんな話してないし』
「甲斐は今日、バイトじゃないんですか?」
とにかく無事かどうかを確かめたい。美貴は声を上擦らせた。
しかし、学校の試験があるからと、当分バイトの予定はないらしい。
それなら甲斐の自宅に電話をすると意気込んだ。

だが、榊原は今は下手に騒がずに静観するよう、穏やかに美貴を諭して言う。
『そういうの。聞き流すぐらいの余裕、見せた方がいい』
のだと。
『大体そんなのないって、絶対に。甲斐みたいに堅い奴がマジで二股とか。
それに、親の立場考えたら、傷害なんて一番ヤバい訳だしさ』
榊原には笑っていなされた。
けれど、こんな悪意にまみれた噂話を甲斐が聞いたらと、
考えるだけで苦しくなる。
今すぐにでも駆けつけて、甲斐の側にいたくなる。
自分がゲイだというだけで、家族まで白い目で見られるのがつらいのだと、
あれほど憂いていたのにと、腹の中が煮え返るようだった。
 
それでも榊原はいきり立つ美貴を宥めるように、声を一段低くした。
『それに、あんまり甲斐の周りがマジ切れすると、
後で甲斐が否定しても、こっちが認めたことになるからさ。
相手にしないのが一番だと思うけど? 甲斐にも俺からそう言っとくから』
榊原は尖った声で告げるなり、珍しくそっけなく、
そして一方的に通話を切り、美貴との応酬を終わらせた。
「榊原さん……?」
美貴は顔から携帯を外しつつ、
もしかしたら榊原は何もかも承知の上で話しているのではないかと直感した。
甲斐が同性愛者だということも。


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向かい風を行く 29

 25, 2017 06:51
榊原を師として仰ぐ甲斐のことだ。
他の誰にも言えなくても、榊原になら相談していたかもしれない。
苛立つ自分を落ち着かせるため頭の中でくり返した。
だが、美貴は顔をしかめて黙り込んだ。それぐらい頭では理解できる。
そう考えても不思議ではない。むしろ師弟の絆がそれだけ深いということだ。
甲斐には良いことに違いない。

こんな時、いちばん甲斐の近くにいる人が業界では権威があり、
甲斐を守ってくれるなら、ほっとできるはずなのに。
胸には湿りけを帯びた黒い靄が立ち込めるのを感じていた。
甲斐を心配してるのに、つまらない嫉妬にかられる自分に苛立った。
美貴はぎゅっと目を閉じた。
そして自分を戒めるように拳で眉間を叩いたあと、
団員のいる座敷に駆け戻る。

「お前。さっきの話、誰に聞いた?」
慌ただしく自分の荷物をまとめると、
美貴は甲斐の噂をおもしろおかしくしていた輩を問い質した。
「はあっ? 誰って別に。覚えてねえよ」
反射的に否定したこの同期の男は、美貴の醤造所近くの精肉店の後継ぎだ。
男はとぼけてみせたものの、美貴の剣幕に臆したのか、
最後は店頭で売っている惣菜の唐揚げやコロッケを、
買った客から聞いたと白状した。
「知ってる奴か?」
「いや、たぶん初めて来た客。見たことねえのに、いきなり甲斐の話ふってきて。
何か変な女って思ったし」
「女?」
「甲斐と同い年ぐらいの、学生っぽい感じだし。すげえ美人だったから。
一度でも来てたら覚えてるよ。
綺麗だったし、愛想いいし。なんか俺もつい話、合わせちゃったけど」
「わかった。甲斐と同い年ぐらいの女だな」
 
美貴は自分の支払い分を幹事に預けて店を出た。
狭苦しい路地裏の横丁は原色の電光看板で点々と照らされ、
通り過ぎる店からは炭火焼の香ばしい匂いや、
男女入り混じる笑い声が聞こえてきた。
そんな楽しげな酔客の賑わいにまで腹を立て、わき目もふらずに路地を出る。

それでも自宅に着くまでの間、ずっと携帯を眺めていた。
しかし、甲斐からの応答はないままだ。
そのあと十分ほどで帰宅して、甲斐の連絡を待ちながら、ネットでも検索してみたが、
それらしい傷害事件のニュースは何も出てこない。
美貴は風呂にも入らずに、自分の部屋で悶々と連絡を待っていた。
携帯を脇に置いたまま、
ベッドの上で寝ころんだり、胡坐をかいたり、窓の外を見てみたり。
狭い檻に入れられた獣のように部屋の中をうろついた。
気づいた時には日付をまたいでしまったが、
甲斐からは電話もメールもラインも何も来なかった。


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向かい風を行く 30

 26, 2017 07:00
とはいえ、甲斐は半日以上携帯を一度も見ないこともある。
昨夜は一睡もできないまま、翌朝悶々として仕事場に向かった美貴は、
昼まで待って何も連絡が来なければ、甲斐の自宅に電話しようと思っていた。
それまでするべき仕事に集中しようと腹をくくり、
醤油の仕込み蔵に顔を出した。

「美貴さん、あんた。あの甲斐って子に二股かけられてフラれたことになってますよ?」
大豆を蒸し煮する巨大な機械釜からは白い蒸気が天井までもうもうと上っていた。
その釜の温度管理を担当している従業員は、
首に巻いたタオルで顔の汗を拭き、半笑いになって美貴に言った。
「はあっ?」
美貴は声を上擦らせた。
すると、別の従業員まで屈託のない口調でからかった。
「それ、さっき俺も聞きました。俺が聞いたのは美貴さんが相手の男、
刺した話になってたけど」
あまりに話が荒唐無稽すぎるのは、従業員達も苦笑するしかないようだ。
美貴も次第に馬鹿馬鹿しくなり、怒る気にすらなれずにいた。
 
失笑だけして、蒸し上がった大豆をステンレスの柄杓で機械釜から、
長方形の巨大な木桶に移し替えた。
そのあと他の蔵人と共に木ベラで均して粗熱を取り、
種麹を表面に撒くのだが、
大豆の粒を崩さないよう慎重に作業しながら問いつめる。
どの噂も『甲斐を取り合う三角関係』だというベースの所は変わらない。
その一点に妙な違和感を覚えていた。

「……で、皆。その話、誰に聞いた?」
「俺は嫁さん」
「俺は昨日の合コンで」
二人は美貴と一緒に木桶の中の大豆を平らに均しながら、
決まり悪げに打ち明けた。
しかし、今日の朝も顔を合わせた両親は何も言っていなかった。
だから噂は、町内の若い奴らの間でのみ拡散されているらしい。

自分か甲斐が、何か逆恨みでもされたのだろうか。
思い当たる節がないか、思案しかけた時だった。
作業着の尻ポケットに突っ込んだ携帯が着信音を蔵の中に響かせた。
奇声を上げて驚いた美貴に、従業員も渋面を浮かべている。
「どうしたんスか、もう。さっきからー」
「悪い、ちょっと」
美貴は呆れる従業員に断りを入れ、携帯を出しつつ蔵を出た。
だが、甲斐からのラインは、『今、ばたついてるんで』の一行だ。

「てめーっ! ラインできんなら電話できんだろうが!」
と、罵倒しながらその場で電話したものの、
やはり留守電サービスになってしまう。
その時、初めて甲斐に意図的に避けられているのだと。
連絡『できない』ではなく、連絡したくないのだと、
美貴は何の脈絡もなく確信した。


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向かい風を行く 31

 27, 2017 06:29
噂が出回り始めてから、甲斐に避けられてしまっている。
拒否されていると悟った美貴は、甲斐が置かれた状況を危惧する思いが、
不安が別の憂苦になっていた。凍えるような心許なさに変化した。
背中を向けられ、置いていかれたかのような、
焦りと懸念が腹の底からしんしんと胸に這いのぼり、
美貴を無口にさせていた。

「ミキも言いたい放題言われてんなあ。
お前が甲斐にフラれて刺したって聞いて。吹いたぞ? 俺は」
筧は神社の境内に張られた簡易テントの下で美貴を迎え、苦笑いして手招いた。
けれども美貴には軽口をたたく気力もない。
「もう俺が甲斐を刺したことになってんスか……」
折り畳み椅子を開いて筧の隣に座り、頭を抱えて溜息を吐いた。

今日は朝から青年団が全員集まり、祭りの通し稽古をしなければならない。
当然甲斐も来る予定になっている。
境内では集まってきた男達が談笑し、和やかな時間を過ごしていた。
しかし、筧のように噂を一笑に伏して終わらせる者もいれば、
藤木のようにここぞとばかりに嘲笑しようと待ち構えている者もいる。
いっそ今日は休ませてやった方がいいのではないか。
美貴は携帯を出して液晶画面を、ただ眺めた。
 
とはいえ、心配だからと言いながら、本当は自分が恐いのだ。
あれ以来、甲斐に避けられてしまっている。
その悪い予感が確信に変わりつつある。
ただの思い過ごしであって欲しいと願いながら、相変わらずメールひとつ届かない携帯を、
鞄に戻した時だった。
遠目にもスタイルの良さが際立つ二人の男が鳥居をくぐり、入ってくる。
「榊原さん……」
憔悴しきった顔つきの甲斐と、肩を並べて現れた彼に、
美貴は驚きの目を向けた。


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向かい風を行く 32

 28, 2017 06:36
「おはよう、美貴君。ちょっと急で悪いけど。
青年団の団長さんと美貴君と、一緒に話をさせてもらえたらと思って」
強ばった顔の甲斐の横で、榊原はいつものように柔和な笑みをたたえていた。
美貴は筧と目を交わし、そのまま四人で社務所の中へ移動した。
 
「すみません。失礼します」
宮司に断りを入れて応接室を使わせてもらい、
ソファの上座に榊原が最初に腰かける。隣には甲斐が腰を下ろし、
その前に美貴が座り、最後に榊原の前に筧が着いた。
「もうご存じだと思いますけど、今日こちらに伺ったのは甲斐の噂の件でして」
口火を切った榊原が一瞬隣に目をやると、甲斐は軽く頷いた。
二人の間では既に何かしらの話がついているらしい。
腹をくくったような目で甲斐も榊原に応えている。
阿吽の呼吸で通じ合う二人の些細なやりとりに、美貴は無性に苛立った。
甲斐は今、いつものように榊原に対して上下関係の壁を作らずに、
無防備なまでに甘えていた。

「俺だってずっと電話してんのに。なんで一回も出ねえんだ」
美貴は八つ当たりに近い鬱憤を目の前の甲斐に叩きつけた。
途端に釈明しようとするように顔を上げ、甲斐は悲壮な目をして美貴を見た。
けれど、甲斐が前のめりになり、口を開いたその刹那、
榊原が遮るように言い放つ。
「実は、今度の話は僕が元凶だったんです」


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向かい風を行く 33

 29, 2017 06:40
「……えっ?」
「美貴君もファミレスで一度会ってるはずだけど。
甲斐と同じ専門学校に通ってる石橋さん。
最初は自分もアシスタントにして欲しいって言ってたのが、つきあってくれになってきて。
その子が、だんだんストーカーっぽくなってきて。
警察に通報したこともあったんだ。
これまでもタイプの男がいたら、とりあえず飛びつくとか。
自分にメリットがありそうな相手だと思ったら、食いついてくるとかね。
相手の気持ちは二の次、みたいなところがある子みたいだね」
榊原は驚愕する美貴を眺めつつ、あえてなのか、おどけるように首をすくめて眉を下げた。
石橋も警察に警告されてからは、さすがに姿こそ見せなくなっていた。
けれど、直後に広まったのが例の噂だったらしい。

「その話。甲斐を取り合ってるのが僕と美貴君だって聞いて、
すぐにピンと来たんだよ。
前に僕が甲斐を寿司屋に連れていった時、
美貴君がすごく羨ましがって、コメントしたSNSあったよね?」
「ああ、……はい。覚えています」
甲斐が自分の誘いは断るくせに榊原ならいいのかと、腹が立ったせいだろう。
鮮明に記憶に残っていた。
「石橋さんなら僕のSNSも交友関係も全部チェックしてるはずだから。
あれを見て、美貴君と俺が甲斐を取り合ってるって勘違いしたんじゃないかって。
それで自分はフラれたんだって決めつけて、
腹いせに甲斐を攻撃してるんじゃないかって気がしてね。
ちょっとカマかけて、彼女に聞いてみたんだよ。」
 
すると、完全に認めるまでにはいかなかったが、
榊原に指摘された石橋の動揺ぶりが全てを語っていたらしい。
石橋が何の関係もない甲斐や美貴まで中傷したこと。
しかも傷害事件を起こしたとまで吹聴されては、こちらも黙っていられない。
榊原は直接石橋を呼び出して二人で会い、きつく釘を刺したという。

「今回の件では僕の不手際で美貴君にもご迷惑をおかけして、
本当に申し訳なかったです」
榊原は不意に立ち上がり、美貴に向かって頭を下げた。
美貴も甲斐も慌てて腰を浮かせたが、更に筧に対しても一礼する。
そうして再びソファに浅く腰をかけ、膝の間で手を組んだ。

「今、説明した通りの経緯ですので、噂は全部デタラメです。
甲斐はこの通り口下手ですから、
青年団の皆さんに、ちゃんと説明できないかもしれません。
ですから、団長の筧さんからも目を配ってやって頂けませんか」
榊原は筧にもう一度頭を下げたあと、美貴に身体の正面を向けた。
美貴君にも不快な思いをさせておいて、こんなことまで頼むのは、
こっちも気が引けるんだけど……。
美貴君も、こいつのこと頼みます」
「……榊原さん」
切々と訴える彼の横で、甲斐は息を呑んでいた。
多くの芸能人も顧客に持つ多忙なメイクアップアーティストが、
自分のために時間を割き、神社にまで同行し、
頭を下げてくれている。
そんな彼を甲斐は今、どんな気持ちで見ているのか。
美貴は茫漠とした不安の影が暗雲のように胸に広がるのを感じていた。

非は全部自分にあると言い、孤立する甲斐の盾になり、
守ろうとしている榊原に熱い目を向け、甲斐は身動ぎひとつしなかった。
落ち着いた榊原の対応を目の当たりにして美貴もまた、
自分の器の小ささを嫌というほど痛感した。
榊原に比べたら、自分なんか癇癪持ちのただの子どもだ。
大人じゃない。
次第に視線を上げられなくなり、美貴は硬く押し黙る。


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向かい風を行く 34

 30, 2017 06:33
「それじゃ、筧さん。甲斐と美貴君のこと。
どうぞ、よろしくお願いします」
「わかりました。大丈夫です。二人の事は俺がちゃんとしますから」
力強い筧の言葉に榊原が安堵したように、ほっと頬をゆるめている。
そのまま席を立った榊原と筧が応接室を出て行くと、
甲斐も黙って腰を上げた。
だが、美貴は先回りしてドアの前に立ち塞がり、甲斐の退室を遮った。

「お前。なんで電話出ないんだよ」
美貴は憮然としている甲斐を睨めつけ、問い詰めた。
たった数日で顔まで違って見えるほど、眼差しも、まとう空気も荒んでた。
「何か俺に言いたいことがあったから、黙ってるんだろ。違うのか?」
迫る美貴に甲斐は横目で一瞥をくれ、聞こえよがしに失笑した。
「別にないです。……言いたいことなんて」
「じゃあ、なんで避けてんだよ」
「……避けてません」
「避けてるねえわけねえだろう。今日だって一回も俺の顔、見ないくせに」
 
加速度的にイライラが増し、美貴の語気も荒くなる。
思わず掴みかかりそうになりながら拳を握って堪えていると、
甲斐が顔を背けたままで苦笑する。
「なんか、あんまり予想通りの反応すぎて。……全部、馬鹿馬鹿しくなったっていうか」
「予想通りって何が」
「同性愛だ、ゲイだ、ホモだってわかると皆。
やっぱり、こうなるんだってわかったら、なんか……」
言いながら俯いた横顔に乾いた笑みを貼りつかせている。
そんな甲斐の顔つきも声音も口調も何もかも、
見ても聞いてもそのたびに、胸が抉られるようだった。
美貴の脳裏にも甲斐を揶揄する人間の、加虐の愉悦に綻ぶ顔が浮かんでいた。

「馬鹿馬鹿しくなって、嫌んなったか? 俺のことも」
それでもぶつけるように言葉を投げた。
すると、ようやく甲斐が美貴の方へ目を向けた。
あのおぞましい顔をした連中と自分までひと括りにするのかと、美貴は眼差しで訴えた。


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向かい風を行く 35

 01, 2017 07:26
「……ヨシキさんは」
甲斐が一歩前に踏み出した直後、
廊下で筧が美貴と甲斐を呼びつける声がする。
と同時に、開いた戸口から榊原が顔をひょいと覗かせた。
「今日はもう、そのぐらいにしてやって。こいつもあんまり寝てないっていうし」
「榊原さん」
「お前もバイト、来週いっぱい休んでいいから。
ちゃんと寝て食って、建て直して来い」
美貴の肩越しに甲斐にも告げて、榊原は顔を引っ込めた。
そんな彼を追うように、美貴の傍らをすり抜けた甲斐が、
廊下まで出て足を止めた。

「嫌になったのはヨシキさんじゃありません。俺はもう自分が嫌になってるだけですから」
喘ぐように言い募る甲斐に、美貴は虚ろな目を向けた。
「……なんで?」
「噂が出た時、一瞬でもヨシキさんを疑った自分が本当に嫌で。
もうヨシキさんに合わせる顔ないって思ったから」
甲斐は大きな掌で顔を覆い、天を仰いで首を振った。
美貴も不意に刃物で脇腹をひと突きにされたかのように、
喉をぐっと詰まらせた。

「疑ったんだ……、俺のことも」
頭のどこかで考えないでもなかったが、実際口にされるとショックだった。
悔しいぐらい何も言葉にできずにいると、甲斐は拳を握り締めた。
「こんなことまで考えなきゃいけない自分が、
今は本当に嫌なんです。だから……」
と言って口を噤み、慌ただしく廊下へ出て行った。
その甲斐の荒々しい足音が、あっという間に遠退いた。

美貴は背中でそれを追いながら、拳を固く握りしめた。
何かを壁に投げつけて、ぶつけて壊したいような、
言葉にできない歯がゆさが身体中に吹き荒れた。


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向かい風を行く 36

 02, 2017 06:30
それでもその日は朝から神社で行なわれたリハーサルに、
甲斐は最初から参加した。
祭の当日は日没とともに、開始を報せる大太鼓が勇壮に打ち鳴らされ、
拝殿前で巫女の神楽舞が奉納される。
その後、境内の参道で新入りから順に手筒花火が披露される。
リハーサルでは、手筒花火の演者の作法や、それぞれの立ち位置、
火薬の取り扱いに至るまで、確認作業が綿密に行われる。

手筒花火は、ひとつ間違えれば生死に関わる惨事になる。
リハーサルでも、参加する演者は真剣だ。
だが、合間の休憩時には下衆な連中が甲斐をチラ見し、嘲笑した。
「俺、本物のホモ。初めてみたわー」
「掘ってんのか? 掘られてんのか? お前の顔なら、どっちでもいけんだろ」
簡易テントの下で折り畳み式のパイプ椅子に数人で固まって腰をかけ、
ここぞとばかりにからかった。

甲斐に粉をかけるのは、美貴とも普段から反りの合わないグループだ。
エリート一家で見た目も申し分ない甲斐へのやっかみ半分と、
指導役についている美貴への鬱憤晴らしが入り混じっているのだろう。
テントの下に用意された長机の上のお茶やコーヒーを飲みながら、
差し入れの菓子を摘んでいる。
甲斐はといえば、新入りのグループから距離を置き、
テントの端で佇んで、一人でペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいた。
首に巻いたタオルで顔の汗を拭き、イヤホンで音楽か何かを聴いている。

挑発されても動じない甲斐に痺れを切らした数人が、
わざわざ正面に回り込み、聞くに堪えない雑言を浴びせかけ、
腹を抱えて笑い出す。
堪らず美貴が前に出ると、筧に肩を掴まれた。

「お前は止めとけ。お前がムキになって否定したら、
噂に火を注ぐようなもんだろう。俺が何とかするからいい」
筧は美貴をたしなめた。
そして、にこやかに甲斐に筧が声をかけ、そのまま立ち話を続けていた。
新入りの甲斐が先輩陣には逆らえない。反発できないと知りながら、
あえて大勢の前で吊し上げ、なぶりものにしようとする。
しかも集団で。
美貴は甲斐をいたぶる卑劣な輩の一人一人の顔と名前を脳裏に刻みつけた。
後輩の指導役としても人としても許せない。
許さない。
この瞬間から美貴にとって奴等は全員仇のようなものだった。

同じ青年団の一員として、今後も必要があれば大人の対応は取るだろう。
だが、必要がなければ話さない。関わらないし、近づかない。
そう心に誓うことでしか、今は甲斐に寄り添う術がない。
一方、団長であり、最年長の筧が甲斐にいつも通りに話しかけ、
ずっと側にいることで、ようやく例の男達の冷やかしも止み、
形だけの平穏が戻ってきた。

筧が睨みを効かせただけで、たちまち尻尾を巻くような連中だ。
所詮それだけの度量しかないのだと、美貴は反吐が出そうになる。
反面、筧の男気には心から感謝した。
ありがたかった。
筧とは甲斐も話しをしながら、時折薄い笑みも浮かべている。
ほっとすると同時に美貴は本当は、その役割は自分が担いたかったと、
胸の中で呟いた。
けれど甲斐の目はもう、ここにいる誰のことも見ていない。筧と話をしながらも、
心はきっと、ここにはない。
美貴は初めて会った頃よりも、甲斐を遠くに感じていた。


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向かい風を行く 37

 03, 2017 07:36
夕映えの空に雲がたなびき、
拝殿の屋根の飾り金具も西日に眩く照り映える頃。
日が暮れるまで祭りの準備に追われていた町内会の人々もはけていき、
森閑とした境内には、
筧と美貴と甲斐を含めた数人の新人だけが残っていた。
 
新人は祭りの当日までに予備を含めて手筒花火を数本作る。
今日は夜を待ってのリハーサルで、
その内の一本に点火して、火花の出方や勢い等を確認する。
その上で場合によっては予備の花火の火薬の量や配合を最終調整しなければならない。
筧と美貴は花火を鉄の補助柵で立てて固定し、新人達にはバケツに水を用意させた。
「試し打ちの順番は?」
「藤木、東、宮内、坂下、甲斐の順番です」
美貴は残りの三本に貼られた半紙に書かれた名前を見ながら筧に答える。
筧も柵に立てられた藤木の花火をしげしげと見た。

「なんか細えな、こいつの花火」
「そうですか?」
筧は麻布や荒縄の巻きが足りないだろうと訝った。
だが、美貴には他の筒と相違なく見えている。
と、その時、コートの内ポケットで携帯が鳴り、美貴はその場を離れて電話に出る。

『ミキ君? あー、俺』
「榊原さん?」
美貴は反射的に周囲を見渡し、甲斐の姿を確認した。
『甲斐はどう? ちゃんとリハ出てる?』
「大丈夫ですよ。挑発する奴もいますけど、筧さんが庇ってくれてるし」
美貴が返事をするやいなや、榊原の安堵の溜息が聞こえてきた。
美貴は人目を避けて、拝殿裏まで移動した。
「……っていうか、榊原さん。マジで甲斐のこと好きなんですよね? 
そういう意味で、なんですけど」
拝殿裏の杉の幹にもたれかかり、『そういう意味』でを強調した。
無意識に語気が荒くなっていた。
まるで喧嘩でも売るように。


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向かい風を行く 38

 04, 2017 07:30
榊原の甲斐に対する気遣いは、
バイトのアシスタントに対する好意を既に越えている。
単刀直入に切り出すと、榊原は間髪入れずに断言した。
『好きだよ。ミキ君が言う、そういう意味で』
抑揚のない口調には、どこか挑戦的な響きがあった。
思わず息を呑んだ美貴の鼓膜を、榊原の含み笑いが震わせる。

『だけど、甲斐は今、ノンケに不信感だらけだし。ミキ君よりは俺の方が有利かも』
「えっ……?」
『ゲイにはね。やっぱりゲイじゃない人間は脅威でしかないんだよ。
ノンケにはゲイが異質な存在で、脅威になるのと同じでさ』
ミキ君にはわからないかもしれないけど。
榊原は最後に独り言のように呟いて、何の前触れもなく通話を切った。
まるで話し合いは無用だと、
無意味なんだと言わんばかりの切り方だ。
美貴は力なく腕を下ろして携帯を切り、筧と立ち話する甲斐を見た。
 
同じ新入りの仲間の藤木達からも距離を取り、何事もなかったようにそこにいる。
そのほんの少しの距離感が、榊原が言うような『ノンケ』を見限った証であり、
甲斐のささやかな主張のように美貴には見える。
甲斐もまた、所詮ノンケにゲイの気持ちはわからない。
今度のことで、もう懲りた。
だから、まともに話もしようとしないのか。
美貴は肩をそびやかせながら境内に戻り、一人黙々と試し打ちの準備をする。
 
甲斐がこちらをゲイじゃないから拒絶するというのなら、
こちらがゲイだからという理由ひとつで拒否することと同じだろう。
それの何が違うのか。
今すぐにでも問い質したい衝動にかられつつ、
騒ぎを大きくしないよう、今は黙っているしかない。
美貴は無意識のうちに顔を背け、甲斐を視界から閉め出した。


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向かい風を行く 39

 05, 2017 06:50
「じゃあ、俺が試し打ちの点火する。皆、もうちょっと下がってて」
煮え返るような腹立たしさが顔にも口調にも出てしまう。
わかっていてもどうすることもできないまま、
美貴は手筒花火に点火する着火棒に火を点けた。

試し打ちには新人が作ったスペアの花火が用いられる。
彼らがちゃんと手順通りに作製したのか確認する為、
リハーサルでは新入り達のスペアの花火に青年団の先輩陣が着火する。
そして問題なければ、本番用の手筒花火を祭の当日、
新人自身が奉納する。

美貴は甲斐を始め、藤木ら新人全員退いたことを確認し、
補助柵に立てられた手筒花火の筒の下に着火棒を差し込んだ。
と、同時に、鎮守の森の薄闇を目も眩むような閃光が切り裂き、
地響きとともに爆音が轟いた。美貴は身体がふわりと浮くのを感じた直後、
猛烈な熱と風圧で数メートル近く飛ばされた。

「ミキ……っ!」
「ヨシキさん!」
悲鳴じみた声が時間差で耳に届き、
誰の声ともつかない声と竹筒が弾けて燃える音がする。
しかし、仰向けに倒れた拍子に頭と背中をしたたかに打ちつけて、
呼吸ができなくなっていた。
 
暴発した手筒花火は足元で赤々と燃え盛り、
つんざくような爆音とともに何度も爆発をくり返している。
そのたび炎は巨大化し、上へ下へと渦巻く炎が地を舐めるように迫ってきた。
このまま炎に巻かれて焼け死ぬのか。
朦朧とする意識の底、死の一文字が点滅していた時だった。
両脇に腕を差し込まれ、巨大化した炎から地面に背中を擦られるように
引き出された。

「……な、えっ……?」
美貴は微かに目を開けた。しかし、全身から立ち昇る白煙を誰かが上着で叩き消し、
バケツの水をぶっかける。
「水、水っ! 早く! もっと水……っ!」
怒号のように叫ぶ男を霞む視界に捉えた刹那、美貴は意識を失った。


手筒の暴発から助け出されるまでの間、
すべてがスロー再生されているかのような妙に遅くてゆるい時間に思えていた。

だが、実際には数分の出来事だったらしい。
火の手が上がった瞬間に、甲斐が炎に飛び込んでいたと、
救急搬送される美貴に付き添ってきた筧が言った。
「本当に、この程度で済んで良かったよ」
処置室から大部屋のベッドに移った美貴の枕元で、筧は悲痛に顔を歪めていた。
それでも、幸い火傷は首や顔など服から出ていた箇所だけだ。
しかもどれも軽傷で、医者にも痕にならずに済むだろうと言われている。
ただ転倒した際、頭を強く打った為、今夜一晩経過入院する手筈になっていた。

「やっぱ、俺が変だと思った時点で外しとけば良かったのに……。
本当にすまない。全部俺の責任だ」
筧は筒の細さに気づいていながら、点火させてしまったと、責任を感じているらしかった。
だが、美貴自身は通常サイズの範囲内だと思っていた。
「でも、俺は変だと思ってなかったし。
最終的には俺の判断で点けたんですから、筧さんのせいじゃないですよ」
美貴はあっけらかんと笑って筧を慰めた。
ベッドサイドには着替えを持って来た美貴の母や青年団のメンバーもいる。

なのに、あの火の中に飛び込んでくれた男の姿は見られない。
美貴は帰宅する彼らを正面玄関まで見送ると、天井灯も消された待合室に立ち寄った。


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向かい風を行く 40

 06, 2017 01:54
筧は甲斐にも病院まで付き添うように言ったという。
けれども甲斐は、
『自分がついて行けば、また、ヨシキさんがいろいろ言われるから』
と、固辞したらしい。
美貴は真っ暗な待合室の椅子に座り、携帯で甲斐に電話をした。
すると、コールを鳴らした直後に繋がり、急くようにすぐに告げられた。
『ヨシキさん?』
「……ああ、俺」
『ケガは……。火傷は大丈夫なんですか?』
甲斐の方から一方的に訊ねられ、美貴は思わず苦笑した。
こんな風に向こうの方から話をされ、
こんなに焦った大きな甲斐の声を聴いたのも、きっと初めてだ。
携帯に電源を入れたまま待ち構えていたような、
緊迫した甲斐の気配が胸を甘く締めつける。

「火傷は大したことなかったよ。ちょっと軟膏塗られただけだったし」
『そうですか……』
柔らかく語尾を擦れさせ、最後にほっと息を吐く。
耳に直接伝わった吐息の熱まで感じたような気さえした。
「お前が助けてくれたんだってな」
絞り出すように訊ねると、返ってきたのは戸惑いにも似た沈黙だ。
美貴もまた、掠れた声で耳をそっと撫でられて、鼓動がどんどん速くなる。
互いに黙っているけれど、
互いの胸に耳をあて、早鐘をうつ心音を確かめ合っているような、
厳かなまでの静けさだ。

「ありがとう……」
『……いえ』
「なのに、なんで病院来なかったんだよ」
美貴は言葉尻を奪うように訴えた。
言いながら、頭の中では違う、違うと叫んでいた。
自分だって筧や榊原のように落ち着いて、包み込んでやりたいのに。
一人で火の粉を被ろうとしている甲斐に温かく応えたい。
なのに言葉に出してしまったら、もっと言いたくなってくる。
甲斐を責めたくなっている。

「そんなに心配したんなら、なんで帰っちまったんだ」
美貴は堅く目を閉じて、眉間に拳を押しあてる。
どうしてこんな甘ったれたことばかり言うのだろう。
自分でも自分がわからない。
あの爆発の火の中に飛び込んでくれた恩人を、さっきからなじってばかりいる。

付き添ってくれた人の中に甲斐がいないとわかった時、
自分がどんなにがっかりしたか。傷ついたか。
病床のベッド周りに誰がどんなに大勢いても心は決して浮き立たない。
ベッドの上で目覚めた時、どれほど寂しかったかを、
いっそ今すぐ呼び出して、
甲斐のあの厚い胸を、広い肩を叩いて揺さぶり、咎めたい。

『でも、俺といると、またヨシキさんが……』
「そんなの勝手に言わせとけ」
美貴は甲斐の言葉をちぎって捨てるように言う。
あれ以来ずっと自分から距離を取り、無視した理由がそれだというなら、
そんな配慮は全然いらない。
突き放したりしないでくれ。
どう言えば、それをわからせることができるのか。美貴は歯噛みしながら目をつぶる。

『……でも』
「俺がいいって言ってんだから、いいんだよ」
それでも抗う頑なな年下男に必死になって言葉を重ね、
開かない甲斐の心のドアを叩いている。


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向かい風を行く 41

 07, 2017 07:40
「それに、噂バラまいたのは俺だって、
お前が疑ったのもしょうがないって思ってる。たまたま、そういう情況だったんだ」
『ヨシキさん……』
「だけど、そんなのチャラにしてやるよ。俺の為に身体張ってくれたんだ」
だから、俺を拒むなよ。
最後の言葉は胸の中で声にならない声で言う。
美貴は椅子の背にもたれかかって薄く笑い、真っ暗な天井を仰ぎ見た。
何か見えない力があるのなら、何でもいいから縋りたい。
助けて欲しいと哀訴する。

本当に欲しい言葉が甲斐から欲しい。
そのためになら何でもする。
他にもっとするべきことがあるのなら、言うべき言葉があるのなら、
誰かに教えて欲しかった。
携帯を耳に押し当てて、美貴は祈るように目を閉じる。
さっきまで心をあれほど満たしてくれた静けさが、今はひたすら恐かった。
甲斐が黙り込んでいる。
その沈黙が刻一刻と長くなる。
まるで拒絶の言葉を必死に探っているように。

美貴は心臓が痛くなるほど不安で鼓動が掻き乱され、
それならいっそ自分から通話を切りたくなっていた。
どんなに言葉を尽くしても、甲斐の気持ちは変えられないというのなら、
終わりにしよう。
するしかない。
榊原が言ったように、どんなに自分があがいても越えることができない壁が
二人の間にあるのなら。
美貴が半ば諦めて、悄然と肩を落とした時だった。

『……じゃあ、俺。明日の朝、病院までヨシキさんを迎えに行きます』
甲斐に遠慮がちに切り出され、美貴は弾かれたように目を開けた。
「えっ? なに。お前……、学校は?」
思わず椅子の背もたれを離れ、前屈みになっていた。
『明日の授業は午後だけです』
「ホントに? マジで? でも……、だけど、別に荷物ないし」
思いもよらない申し出に、美貴は声を上擦らせた。
明かりの消された待合室のソファからも立ち上がり、
落ち着きのない獣のように、あちこち無意味に行き来する。
「……迷惑ですか?」
「いや! ……ってか、迷惑かけんのは、こっちの方! 
だって来てもらっても、してもらうことないからさ」
美貴の遠慮と戸惑いを、暗に断られたと捉えたのか、甲斐の声が細くなる。
美貴は慌てて否定した。
「じゃあ、俺。明日は有給休み、もらってるし。家の皆は働いてるし。
一人でタクシー使って帰るつもりだったけど」
『だったら、車で迎えに行きますよ』
「車? マジで?」
『はい。タクシー使うことないですよ』
甲斐が珍しく押してくる。
美貴は目の前に甲斐がいるかのように、どんどん顔が強張った。
これは俗にいう『壁ドン』状態なんじゃないのか、と。
逃げられないのだ。頭の左右に甲斐が手をついているようで。
「なら、お前。タクシー代わりにしてやるよ」
あえて高飛車に答えると、ほっとしたような軽い笑い声がした。

『いいですよ。タクシーで』
甲斐の声音が俄かに和らぎ、
苦笑と一緒に耳に伝わる吐息が妙に艶めかしい。
電話で話をする時は、顔を合わせてするよりも、こんなに声を近くに
感じるものなのか。今まで一度もそんなこと気にしたことはなかったはずだ。
なのに甲斐の声が耳から自分の中へと流れ込み、
心臓にまで達して刺さる。

タクシーでもいいですよ。そう言いながら笑った甲斐の声音も口調も、
きっと一生忘れない。
美貴は携帯を耳に押し当てて、奇妙な感傷に浸っていた。
すると、思いがけない方向から別の矢が飛んで来た。
『美貴さんを一人で退院させるなんて、そんなこと嫌ですから』


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向かい風を行く 42

 08, 2017 08:22
「お前、また。何言って……」
美貴は空笑いを響かせながら狼狽した。
ついさっき電話の良さをあらためて噛みしめたばかりだが、今度もやはり
電話で良かったと思ってしまう。
きっと不審がられてしまうほど、顔が真っ赤になっている。
今のはきっと社交辞令の延長だ。
特別な意味など何もない。
美貴は火照った頬を手ではたき、落ち着けと自分に言い聞かせた。

明日は平日で、しかも退院時間も午前中。親も友人も仕事がある。
送迎が必要なほど重症者でもない以上、休みを取らせるまでもない。
だから退院手続きも一人でする。そして一人で帰宅する。
当然のことだと思っていた。
とはいえ皆には平気を連呼したものの、腹の中では少し寂しい。
心細さを覚えていた。
あれほどの爆発に巻き込まれ、焼死しかけたせいなのか、心がグラグラ揺れるのだ。

それを甲斐は見抜いていた。
甲斐がわかってくれていた。
美貴は伏し目がちになりながら、かけてもらった優しい言葉を噛みしめる。
この声を、口調を反芻していたら、胸の辺りがぽかぽかしてきて満たされる。

「だけど、お前だって火傷ぐらいしてるだろ」
甲斐に迎えに来て欲しい。
けれど、自分は身体中に水泡ができたほど軽度の火傷を負っている。
入院したのは吹き飛ばされて頭を打っていたからだ。
甲斐だって入院とまではいかなくても、きっと怪我はしているはず。
それなら、こんな我儘なんて言えないと、美貴は声のトーンを低くした。

『僕は大丈夫です。明日も普通に学校行こうと思ってました』
「本当に……?」
『だから車で行きますよ。病院からヨシキさんの家までは少し距離があるでしょう?』
そうなのだ。
入院したのは救急患者の受け入れを承諾している総合病院。
隣町の郊外だ。
この身体中包帯で巻かれたフランケンシュタインのような姿では、
バスや電車は乗りにくい。
だから、タクシーで帰ろうと思っていたのだ。
多少の金はかかっても。

「ペーパードライバーじゃねえだろうな。よく乗るの?」
『割と』
「どうせ免許取った記念にとかいって、車買ってもらったんだろ。
お坊ちゃま」
「まさか。親の車を借りてるだけです。自分のなんか、ないですよ」
軽口をたたいた美貴にも、甲斐は生真面目に返答する。
相変わらずの一問一答形式だ。
美貴が思わず吹き出すと、つられるように甲斐の吐息もほころんだ。

「それなら明日の朝。退院の手続きとか全部終わるの十時ぐらいだけど。
来れるか? お前」
『わかりました』
「病院の正面玄関出た所でLINEするから」
『はい』
じゃあ、と言い合う声がどことなくぎこちない。それでも耳に心地良い。
その後もいつまでも切ろうとしない甲斐のせいで、美貴の方から通話を切った。
とても静かに、ゆっくりと。

明日は甲斐が迎えに来る。
車のハンドルを握る甲斐の隣に招かれる。
美貴は携帯を握りしめて胸にあて、甘い吐息を吐き出した。


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向かい風を行く 43

 09, 2017 06:55
翌日の朝、約束の十時までに退院手続きを済ませ、
そわそわしながら正面玄関を出て行くと、駐車場で片手を上げる男がいた。
すらりとした長身で腰の位置が高く、頭が小さい九頭身のモデル体型。
遠目に見ても、ひと目でそれが誰だかわかる。
甲斐の側には日本一高価な国産車。車のボディはシルバーだ。

運転する時の習慣なのかもしれないが、今日はフレームの細い眼鏡をかけている。
「ヨシキさん」
甲斐は駐車場から前まめりになって駆けて来た。
だが、その手にも足にも顔にも火傷の痕が生々しく残っている。
「お前……。大したことないって言ってたじゃないか」
美貴は甲斐の頬の赤くただれた皮膚に指をそっと近づけ、
茫然として訴えた。

それなのに当の本人は、
「こんなの病院で軟膏塗られて終わりでした。それよりヨシキさんの方こそ」
と、話を終わらせようとする。
「だって、痕になったらどうすんだよ」
「痕にはなりませんよ。ちょっと日焼けしすぎた程度の火傷です。
それよりヨシキさんこそ……」
甲斐は美貴の杞憂を意に介さずに一蹴し、美貴の頭の上から足先まで視線でゆっくり
なぞり出した。
「……痛いでしょう。こんなに全身ただれたら」
「痛くねえよ。鎮痛剤もらったし」
包帯を巻かれた箇所の多さに、甲斐は圧倒されたようだった。
沈痛な面持ちで黙り込み、美貴をじっと見つめてきた。
互いに強がりを言い合って、いつのまにか互いをかばい合っている気がしていた。

「早く車に乗って下さい。あんまり日に当たるのも良くないですから」
甲斐は美貴を先導するように駐車場へと歩き出した。
眼鏡をかけた今日の甲斐は、いつもより大人びて見えていた。
美貴は伏し目がちに「……うん」と言い、広い背中の後を追う。
少し離れて後ろを行く。
横に並んで立てない気がした。後ろが良かった。顔が見えない方がいい。
目が合えばきっと挙動不審になるという確信が徐々に芽生えていたからだ。

だが、ここは、やはりありがとうと言わないと。
それとも心配かけて悪かったと、先に謝るべきなのか。
筧や仕事仲間が相手なら、咄嗟にできる挨拶すら、考えなければ出てこない。
早く何か言えよと急かす自分の声がさっきから頭の中で響いているのに、
言葉が堂々巡りするだけで手も足も出なかった。

やがて、先程立っていた車の前に到着し、
甲斐がブランド物のキーホルダーをつけた鍵を運転席のドアに向けた。
ロックが外される音がして、ぎこちない笑みを浮かべて言う。
「あの、……じゃあ、乗って下さい」
「……ああ、うん。サンキュ」
しかも遠慮がちではあるけれど、促すように美貴の背中に触れてきた。
それだけでまた心臓がぎゅっと縮み上がり、
どっと汗が噴き出した。

甲斐の掌が背中に当たっている。
こいつ、俺に触ってきたよと、胸の中で壊れたようにくり返していた時だった。
後部座席のドアが甲斐の手で開かれた。
「何でだよ! お前は俺の運転手か!」


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向かい風を行く 44

 10, 2017 05:13
美貴は背中から甲斐の手を払い退けつつ一喝した。
助手席ではなく後部席。
本当にタクシーだ。でなければ、国会議員の先生を送迎する秘書。
あまりに自然にされた行為に一気に現実に引き戻され、
一瞬で頭も胸も冷えていた。
 
それでもこれが自分に対する正直な距離感なのだろう。
美貴は一人ではしゃいでいたのが馬鹿みたいだと、打ちのめされた気分になった。
尻尾を振ってじゃれ寄って、突き飛ばされた犬のようにみじめだった。
美貴は無意識に肩を落として息を吐き、助手席のドアを勝手に開ける。
憤然として助手席に乗った美貴を不思議そうに眺めたあと、
甲斐も運転席に乗り込んだ。

「ヨシキさんの家まででいいですか? その前に寄りたい所とかあれば行きますけれど」
「いいよ、大丈夫だから。家までで」
甲斐に優しく聞かれても、美貴は邪険に答えたきり、侘しく口を閉ざしていた。
一歩でも近づけたなどと歓喜したのは思い上がりだったのか。
それとも勝手な期待だったのか。
だが、突き放されてこんなに傷つく理由は何なのか。

美貴はその理由という名の塊に触れかけて、
火傷しそうな熱と痛みにはっとして手を引く自分を意識の隅で感じていた。
けれど、そんな自分も甲斐の姿もいっそ全部締め出したくなり、
車窓の外を無理やり眺め続けていた。


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